防災教訓/教育

2024年1月30日 (火)

いわゆる火事場泥棒に関する流言・デマ

能登半島地震に関して、いくつかの取材を受けました。

そのうちの一つが、毎日新聞の1月25日夕刊2面の記事になりました。現在は、同紙のネット無料公開版で、2回に分けて掲載されています(下記タイトルは、紙面とは微妙に違っています)。

不安あおる「震災デマ」 東日本大震災、宮城県警は打ち消しに動いた

https://mainichi.jp/articles/20240126/k00/00m/040/047000c

https://mainichi.jp/articles/20240126/k00/00m/040/081000c

取材を受けたのは、ジャカルタ勤務時代の旧知・井田さんでした。ご縁を感じました。

さて、その内容ですが、非常によくまとめていただいていて、感服しました(さりげなくインドネシアとつなげるあたりは相当の工夫!)。最後の「社会全体のリテラシーをいかに高めるか。僭越(せんえつ)ですが、メディアの方から繰り返し伝えていただくことも大事」はまさに我が意を得たりの思いです。

他方、「能登半島地震では、当初から「外国人盗賊団」などのデマがインターネット上で拡散された」とのことで、非常に残念です。愉快犯というべきか、最初は誰かが面白半分にSNS等に書き込むわけでしょうが、記事の中にもある通り、悪影響は甚大です。13年前の東日本大震災当時、今回の見出しにある通り、宮城県警はまさに「打ち消し」に動きました。この辺りは、小欄2022年9月1日「防災の日」もご覧いただければ、幸いです。しかし、噂の広がりを止めきるところまでには行かず、悔しい思いもしました。

今回の地震の流言・デマを教訓として、ぜひぜひ、社会全体の抗「デマ」力が高まることを強く期待する次第です。また、実際に発生している犯罪については、当然ながら、警察は可能な限り捜査を行い、かつ、発生抑止のためのパトロール強化等を行うべきであることは、言を俟ちません。

ちなみに今回の毎日新聞は、下記のように、我々のNPOについても触れてくれました。ありがたいことです。

昨年、竹内さんは、大規模災害に際して、警察や自治体を支えることを目的とするNPO法人「災害時警友活動支援ネットワーク」を設立した。竹内さんのほか、元警視総監や警察庁の局長経験者ら警察OBが参加する。

 

2024年1月 5日 (金)

能登半島地震

元旦夕刻の標記地震により被災された方々に、衷心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。

被害概要がつまびらかになるにつれ、いろいろ思うところもあります。(例えば、安否不明者の氏名等リストや、死者名の公開については、そのタイミング、リスト作成方法、発表主体等の在り方が改めて問われるのかもしれない、とも感じます。)

今回の地震は、都内におりましたが、実際の震度以上に横揺れ幅のある嫌なタイプの地震だと直感しました。これは津波を引き起こす可能性の高い地震だ! 13年前の東日本大震災の時を思い出し、津波の程度が大きくならないことを祈りながら、NHKニュース映像を見つめた次第です。

その後、津波の実態はもちろんですが、膨大な数の家屋の倒壊や、火災、土砂崩れ等の惨状が明らかになり、アクセス道路が限られる半島部という地理的な条件もあいまって、非常に大きな被害になってしまっていることに心を痛めております。倒壊家屋の下敷きになりながら、救助を待っていた方々のことを思うと、まさに言葉もありません。

設立したばかりのNPO法人災害時警友活動支援ネットワークは、残念ながら、今回の地震に対して、全く何もできておりません。このことにも、個人的には無念の思いでいっぱいですが、準備が整わない間は軽挙妄動できないので、自重するしかありません。

今回の地震から得られる教訓を今後にどう生かすのか。

これは、政府をはじめとする関係者全体の課題だと思います。

我々のNPO法人としても、せめてその思いだけは共有したい。強くそう思う次第です。

 

2023年11月21日 (火)

朝日新聞「ひと」欄

本日付の標記記事において、大変ありがたいことに、私のことを取り上げていただきました(警察謝恩伝道士として、というよりも、NPO法人災害時警友活動支援ネットワーク代表理事として)。

https://www.asahi.com/articles/DA3S15797704.html?iref=pc_rensai_long_50_article

このコラムは、昔からかなり訴求力の強いもので、さっそく各方面からメッセージが寄せられました。

出来立てほやほやの当法人ですが、何とかこれをきっかけに、知名度を上げていきたいと願っております。

それにしても、書き手のI記者は、小欄でも何度かご紹介した方ですが、改めてスゴイ人だと感じました。ありがとうございました。


			

2023年10月13日 (金)

NPO法人災害時警友活動支援ネットワーク

 標記の名前のNPO法人を仲間の皆様と共に設立いたしました!英語名はSupporting Network for Police Veterans/Fellows Voluntary Activities against Disaster(略称SuNPoD)です。

 ホームページ(会員Kさんの苦心の産物)のURLは下記になります。ご覧いただけると嬉しい限りです!

https://www.sunpod2023.com/

 12年前の東日本大震災の際、一部の県警OBから、無償で作業を手伝いたいという非常にありがたいお申し出がありました。しかし、津波警報・注意報がまだ出る現場は潜在的にかなり危険で、何の身分保障等もないまま、いきなりお手伝いいただくわけにはいかないということになり、断念せざるを得ませんでした。

 そういう経緯もあって、いつか警察OBの知見・経験を災害現場で活用するような枠組みを作りたい。こういう野望を抱いておりました。今回、仲間の皆様の絶大なるご協力により、ようやくNPO法人格を得たところです(登記手続終了により913日成立)。

 設立趣旨書にもある通り、このNPO法人は、「災害時の警察活動及びこれに関連して様々な主体が行う災害対処活動(以下単に「災害時警察活動」という。)並びに災害時警察活動に対して警察OBをはじめとする民間有志(以下「警友」という。)が自主的に支援する活動(以下「災害時警友活動」という。)に関する調査研究や、災害時警友活動の実施・普及啓発、災害時警察活動及び災害時警友活動の協働に関する提案・発信等の事業を行うことにより、災害時警察活動の効果的な実施と社会全体の災害対応力の向上に貢献すること」を目指す非営利組織です。NPO法人になれば、災害時警友活動の実施のために必要となり得る災害対応関係機関との協定の締結主体になることができると考えております。

 また、ホームページの代表理事挨拶の部分で、次のように記しました。

 (略)10万人単位の人的被害が見込まれる南海トラフ巨大地震や日本海溝・千島海溝沿い巨大地震の発生時に、同様の事態が生じないと言えるでしょうか。東日本大震災時のような混乱を避けるためには、当時を経験した警察OB等の関係者の知見をもっと活用すべきではないでしょうか。このほか、大規模・長期の応援部隊派遣を受け入れる際のロジ機能(宿泊や飲食物の手配等)も、多忙な現役警察職員に対して、経験豊富な警察OB等がもっと支援できる領域と考えています。

 警察OB等の民間有志の中には、このような現状を憂い、災害時の警察活動及びこれに関連して様々な主体が行う災害対処活動に対し、「共助」の視点で貢献したいと願う者も多いところであり、まさに、そういう同志が今回結集し、「災害時警友活動支援ネットワーク」というNPO法人を設立するに至ったのです。

 我々は、今の各種災害対策の中で、検討・準備が不十分かもしれない分野を見出し、そこに警察OB等の「警友」の知識・経験を投入して、我が国の災害対策水準の更なる向上に貢献したいという野望を抱いています。本年、令和5年(2023年)は、関東大震災100年、日本海中部地震40年、北海道南西沖地震30年の節目に当たります。我々の活動をスタートさせるに当たり、これ以上の年はありません。

 皆様、ぜひ我々にお力をお貸しください!共に災害対策の新展開を目指しましょう!被災者のために!

 まだ生まれたての「よちよち歩き」の法人で、人的基盤・財務基盤の確立を含め、すべてはこれからが勝負になります。具体的な事業内容としても、現役側が必要とする活動類型(ニーズ)と、OB側が提供できる支援活動類型(シーズ)との間のマッチングを含め、まずは調査研究から徐々に始めることになると思われます。その過程で、災害時警友活動の実施・普及啓発等も行ってまいりたいと考えております(「実施」は、災害発生時というより、当面は訓練機会に現場に赴くことを想定しております)。

 小欄をお読みいただいて、もし当法人にご関心を持っていただけましたら、ぜひ下記宛にお問い合わせください!よろしくお願い申し上げます。

E-mail: take292145@gmail.com

2023年4月24日 (月)

みやぎの3.11「回顧編」

宮城県では、「東日本大震災復興検証事業」の最終年度たる昨年度において、震災の復旧等に携わった職員等へのインタビュー調査を行ったのですが、その一環として、当時の幹部職員12人を対象にしたインタビューを聞き書き形式でまとめた標記資料を先週公開しました。

https://www.pref.miyagi.jp/documents/45899/miyagi-311kaikohenall.pdf 

不肖小欄も、この資料のp179-p194に登場しております。

小欄があちこちで行っている「語り部」活動もそうなのですが、あの大震災の教訓を継承する上で、当時の関係者がこのように記憶等を呼び起こして、肉声や記録の形に残すことは非常に重要であり、その意味で、本事業も意義深いものだと思います。

実は、この件は、昨年6月に県庁から打診され、その結果、822日にインタビューを受けておりました。

小欄は、昨年来、次のように、広義の行方不明者対策に関連する記載を継続しておりましたが、こういった記載を始めるきっかけになったのが、実は本件インタビューへの対応準備でした。

  • 7月28日「関東大震災発災99年が近づいてきた」
  • 9月1日「防災の日」
  • 10月24日「宮崎県警」
  • 11月22日「広義の行方不明者対策」
  • 12月6日「広義の行方不明者対策(承前)」
  • 12月27日「警察の対応の変化:「行方不明者対策」⇒「行方不明者の相談活動等」」
  • 2月15日「内閣府(防災)の氏名公表に関する方針案」
  • 3月3日「河北新報報道(2023/3/2)「犠牲者身元特定に成果 不明者情報」」
  • 3月27日「大震災12年目の関連報道(中国新聞・河北新報・南日本新聞)」
  • 4月7日「内閣府・防災分野における個人情報の取扱いに関する指針(R5.3.24公表)

と申しますのも、宮城県庁の既存の大震災関連記録を拝見すると、遺憾ながら、「行方不明者対策」の語は全く登場しませんし、当時の宮城県警が手探りで(試行錯誤的に)行った各種取組に関する記載が不十分・不正確☆であり、この機会に、ぜひ補足・修正しておきたいと感じたからです。

☆ 一例 「発災後1年間の災害対応の記録とその検証」第4章第6節「埋火葬対応」p498-502 

https://www.pref.miyagi.jp/documents/3686/04dai4syou.pdf 

特にp499の「遺体安置所での業務は、当初は受付、案内、聞き取り調査等であったが、人員不足により県警察から市に対する事前の調整や相談がないまま、遺体確認の立会いや遺体写真の照合等へと業務が拡大した。遺族への対応や聞き取り調査等は想定されておらず、訓練等も全く行われていなかった。」

 その意味では、この「回顧編」の小欄関係分中、特に下記の部分に力点を置きました。そこで、ここに部分抜粋させていただきます。

行方不明者対策としての業務フロー

 具体的には、遺体安置所で検視をして身元確認をするわけですけれども、場所ごとに検視班を送り込む。例えば3月19日の段階で、既に4,800体余りの御遺体が収容されており、19か所の安置所があって、日々御遺体が入ってきます。御遺体の数がさらにどんどん増えていく。一歩間違うと屋外安置になりかねない。それはもう絶対に避けたいという思いがありました。

 捜索し、御遺体を収容し、検視・身元確認を行うといった一連の業務フローの出発点は、行方不明者数です。行方不明者は何人いるのか? それらが、我々として捜索して発見収容すべき御遺体の数になるわけですが、単に数だけではなく、お一人お一人の特徴等の情報については、ぜひ知っておきたいわけです、身元確認のために。

(略)そういうこともあって、警察としては、ある意味やりすぎるぐらい、やってしまった部分がありました。警察が主導した遺族対応について、応援で来られる県庁の職員にしても、かなり違和感があったと記録に書かれていますが、これは事実だろうと思います。こちらも手探りで始めた業務ですし、マニュアルがない、業務範囲も不確定といったことは、ある意味仕方のないことでした。

次に同じ状況だったらどうなるかということですが、おそらく今は、「警察はそこまでやる必要はなくて、安置所の設置も遺族対応も市町村がメインでやりなさい、そして県が調整しなさい」ということになっていると思います。

当時は我々としても、全く初めての出来事でしたし、市町村との間の事前の連携とか訓練も十分でなかった。反省点は多々ありますが、私は、広い意味の行方不明者対策として、いくつかの業務を関連付ける必要性を感じています。

警察はどこまでやるべきなのか

 ある沿岸部の町の職員証言集の中に、「警察の死体検案書作成が遅れて埋火葬ができなかった」というくだりがありました。それはさすがに勘弁してほしいと思いました。そこは、1通いくらで検案書を書くのかという手数料の問題なども含め、本来は市町村が担うべき部分なのです。検視が終わり、死因と身元の確認作業が終わった後、埋火葬の手続に入るための死亡判断(=死体検案)は、実は警察の管轄外(災害救助法上の「死体の処理」の一部)なのです。本当はそういうことも含めて、平素から市町村との連携を強め、実質一体になってやれればいいのですが、当時は結局、お医者さんを確保するのも事実上警察が主体になる。確かに日本法医学会や警察医の学会との交流もあり、普段から警察とセットで仕事をする警察医の先生方はぜひ協力しようということで来てくれるわけです。これらの検案医がいないと、そこで流れ作業のボトルネックになってしまって、まさに件の職員が問題だと思ったようなことが起こってしまいます。だから、次の大災害のために、どうやって死体検案体制を確保することができるか、棺の問題やブルーシートの問題、埋火葬も含めて、関連業務の全体を見渡すような新たな視点と仕組みづくりが必要ではないかと思います。

 例えば行方不明者については、今の県庁の記録ではほとんど出てきません。実際にどこの何部が主管なのかも分かりません。防災基本計画が改訂になり、市町村が主体である一方で、「県が一元的に集約する」となっています。

 警察はもちろん全面的に常に協力するはずですが、東日本大震災の発災当時は、こちらとしては無我夢中でやりすぎるぐらいにやっていく過程で、警察庁から「いくらなんでもそれは県警の仕事の外でしょう」と言われる事態になりました。大災害時にどこまで警察が担って、どこまで市町村が引き受けるのか、フロー図の形で業務イメージを事前に作り、県を含めて相互調整した上で、それに沿った図上訓練を行うことが大事だと痛感しています。

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追記1 出来上がった記録を改めて読むと、当時の警察本部長として記録に残す部分が、特定の課題だけのように見えてしまっている点について、大いに反省しております。この記録の紙数面の制約等がなければ、多数の殉職者を出してしまったことに関する悔恨や、全国警察の支援に対する謝意等を記すよう、インタビューの聞き手の方々に働きかけておくべきでした。今となっては、もはやリカバリー不能なので、別の形(例.2021313日 の小欄で紹介した「手記集「あの日、あの時、あの思い」等を活用した「語り部」活動)で補充してまいります。

追記2 他の幹部の方々の記録部分に言及することは本来差し控えるべきでしょうが、誤解を生みかねない下記記述(「伝聞ですが」と前置きされてはいます・・・)については、一言補足させていただく非礼をお許しください

p84警察庁長官が警視庁幹部を連れて、石巻の旧青果市場の遺体安置所を視察し、安置されている多くの御遺体を見て、「おまえら何をやっているんだ」と激怒された。それで警視庁がすぐ東京都に働き掛け、数百体を火葬するということになりました。

警察庁長官の来仙は4月4日でした。むしろ、p189-190「埋火葬への関与」で記載されている通り、警視庁を介した東京都へのお願いや、県警・県庁間の調整等は、その前の週の出来事でした。当時、手帳にその日の対応状況を結構克明にメモしておりましたので、この時系列的な事実関係には間違いありません。

 

2023年4月 7日 (金)

内閣府・防災分野における個人情報の取扱いに関する指針(R5.3.24公表)

2月15日の小欄で触れた「内閣府(防災)の氏名公表に関する方針案」ですが、324日、内閣府から「防災分野における個人情報の取扱いに関する指針」として公表されました。

元の案にあった15の事例のうち,事例8(「避難者の無事をFMラジオで周知」)がパブリックコメントを受けて削除され、事例番号が繰り上がったのですが,元の案の段階の事例9については、事例8としてそのまま正式の指針に盛り込まれています。

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=095230130&Mode=1 

実は、小欄も、意見提出いたしました。全部で19件の上記意見一覧中の6番です。具体的には、下記のように記載しましたが、500字の字数制限があって、言いたいことのすべてをきっちり書くことができませんでした。

政府方針案として、事例9で「安否不明者の氏名等の公表を行うことができると判断し得る」、「家族の同意の取得は不要」と明記した点は評価できる。他方、東日本大震災の際の実務等にかんがみ、(1)市町村による住民基本台帳・避難者情報等の突合からの業務の流れより、「行方不明者相談ダイヤル」等(HP等を含む)による安否情報の収集・公表について触れるべき(+留意事項として、目的の明示の必要性や、都道府県の枠を超える広域(海外を含む)の情報を前提としたダイヤル等設置・運営の在り方も、論ずるべき)、(2)「安否不明者の捜索」目的だけでなく、その後の「遺体身元確認」目的の関係機関への提供も視野に入れるべき(⇒必要性が認められない例としては、(略)発災後長時間が経過し救助の可能性がない場合がある」との記載は、利用・提供は72時間限定との誤解を生むのではないか)、(3)公表終了後の情報の転々流通を防止するための措置(p63の提供先における廃棄義務に類似するもの。例:公表時PDFファイルの複写禁止機能)についても論ずるべきではないか。総じて、現場における本指針の有用性を高めるため、作成後も加筆・修正する姿勢を示してほしい。

これに対する内閣府(防災)担当者の「回答」は、下記の通りでした。

(1)(2)について、本指針は、主に災害対応に知見を有する地方公共団体を対象としたアンケート調査やヒアリングにより、個人情報の取扱いの判断に迷う事例を選定しており、事例9は、「安否不明者の氏名等の公表」について法的整理をしております。なお、(1)について、市町村が被害情報や住民基本台帳の情報、避難所への問い合わせ等をもとに安否不明者リストを作成し公表するという事例設定は最近の実災害の事例に基づいており、住民基本台帳の情報の取扱いについては判断に迷う面があることから、取り上げているものです。安否不明者のリスト作成に活用し得る情報をそれらに限定する趣旨ではありません。

(3)安否不明者の氏名等を公表することにより安否情報を収集するには、前提として、本人や知人等が当該情報を認識できるよう、情報が広く流通する必要がありますので、原案のとおりとさせていただきます。

なお、指針については、今後、説明会等を通じて理解促進を図りつつ、地方公共団体からの意見を踏まえ、事例の充実等必要な見直しに努めてまいります。

「安否不明者のリスト作成に活用し得る情報をそれらに限定する趣旨ではありません」との記述は、いかにも官僚らしい書き方とロジック(元役人の小欄が言うべきことではありませんが・・)です。「事例設定は最近の実災害の事例に基づいて」いるとのことで、おそらくこの実事例は風水害ではないかと推測しますが、東日本大震災級の大災害ではうまく機能しないのではないかという趣旨の小欄意見(字数制限のためこの辺りを明確には書ききれなかった恨みがありますが・・)に対し、「論点のすり替え」ではないか、と感じました。

唯一の救いは、「今後、説明会等を通じて理解促進を図りつつ、地方公共団体からの意見を踏まえ、事例の充実等必要な見直しに努めてまいります」の記述で、ぜひぜひ、この14事例以外の論点設定を行っていただきたいところです。

 

2023年3月27日 (月)

大震災12年目の関連報道(中国新聞・河北新報・南日本新聞)

一昨年の10年を過ぎた後は,社会的関心が薄れるのではないか,と勝手に危惧しておりましたが,今年は13回忌ということもあって,3.11の前後に各報道機関は相当の報道をしてくれました。そのうち,小欄と関係の深いもの3件を紹介させていただきます。

(1)39日中国新聞(広島)「災害時の安否不明者、名前公表案に評価の声 中国地方などの被災地 円滑な運用への懸念も」

https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/278973 

小欄が215日に触れた 「内閣府(防災)の氏名公表に関する方針案」に関し、中国新聞から、電話取材を受けました。取材・執筆は,同社東京支社所属のY記者でした。36日に,河北新報を介して,メールで申込みがなされ,8日に電話取材を受け,翌9日には記事になるというスピードでした。小欄への取材に基づく記事内容としては,

  • 「自治体が迷うことなく,公表に踏み切れる」と指針案を評価する。
  • (東日本大震災の際の宮城県警による公表について)「安否確認や遺体の身元判明につながった」と振り返る。
  • (指針案が公表の必要性を認めない「長時間が経過し救助の可能性がない場合」について)「短い期間でしか認められないとの認識が広がる」と案じる。
  • 「方針で相談ダイヤルの取り組みにも触れるべきだ。今後も議論と修正を続けてほしい」と望む。

という形で,基本的に,小欄の主張をそのまま載せていただいたので,感謝に堪えない思いです。

(2)311日河北新報「誤報だった「仙台・荒浜で200300の遺体発見」 当時の担当記者が経緯を検証」

https://kahoku.news/articles/20230310khn000030.html 

こちらは,小欄で何回か紹介したS記者の筆によるものです。実は,この関係の取材は,同記者から2年前の「大震災10年」の時に受けていて,一度,同社の「note」にS記者の署名記事が掲載されていたのですが,「地元でも弊社内でもあまり知られていないことから加筆修正し、WEB記事として発信しました」(S記者)とのことでした。

この「荒浜200-300遺体の誤報」については,小欄としては痛恨の思い出であり,自戒・反省教訓の意味を込めて,語り部活動でも必ず紹介しております。

今回のWEB記事では省略されていましたが,2年前の下記「note」版の方は,宮城県警広報課が2011311日午後1016分に掲示した「参考情報第68報 件名・死亡者数」メモの現物写真も掲載しており,まさに,誤報発出の「動かぬ証拠」を突き付けられた感がありました。

https://note.com/kahoku_shimpo/n/n7b7bb4d9a4bb 

このメモにある「荒浜12丁目」という地番は実は存在しない(注:「荒浜」,「荒浜新1,2丁目」という地番は存在する)ので,S記者は当時少し疑問を持ったそうですが,結局は,初日夜というタイミングでの最初の大きな犠牲者の「数字」が出たことの「重み」もあって,同紙をはじめ各紙がそのまま報道し,「事実」として流布する事態になりました。

小欄としては,正確な被災情報の収集・発信(特に直接見聞情報と伝聞情報の峻別),地番確認の必要性等,極めて重くかつ手痛い教訓を得た,まさに生涯忘れ得ない出来事であり,それを思い起こさせてくれる貴重な報道です。

警察は,誤報は出してはなりません。しかし,だからといって,災害時にも確認が取れるまで発信しないという姿勢を取り続けることが正しいかどうか,は疑問です。「未確認情報」である旨の注意書きを,しつこいくらいに付けながら,あくまで参考情報として提供することはできないものか。これからも自問を続けることになりそうです。

(3)316日南日本新聞(鹿児島)「殉職14人消えぬ悔恨 元宮城県警本部長に聞く 迅速な情報発信に葛藤」(注:オンライン版の掲載なし)

こちらの取材・執筆は,同紙の若手K記者でした。取材を受けたのは26日でしたが,K記者は,河北新報主催「東日本大震災に関する記者講座」(関心のある地方紙の若手が対象;初めて実施した模様)に参加するため来仙中でした。大震災教訓の風化防止のため,同講座を企画・開催した河北新報と,来仙機会に当時の関係者に取材しようとしたK記者の積極姿勢に敬意を表しつつ,以下,記事中の小欄発言を部分引用させていただきます。

  • (仙台市荒浜「200-300遺体」発見の誤報について)「警察無線が集中し、現場の警察官が平静さを欠いて言葉足らずになったり、伝聞だと伝え損ねたりした結果、未確認情報が事実と化し拡散したのだと思う」
  • (警察官14人の殉職について)「なぜ『海岸線から一斉撤収せよ』と指示を出せなかったか。時間的余裕がなかったのは事実。津波に迫られ助かった警察官は『撤収指令が出ても目の前に住民が残っていれば逃げられなかった』と明かした。崇高な使命感だが、だからこそ強く命じるべきだった。悔恨の念は消えない」
  • (南海トラフ地震で約2000人の死者が出るとの鹿児島県の被害想定について)「一人でも多くの命が無事であることはその後の救助活動にも影響する。大丈夫だと思い込まず,まずは避難する意識を持ってほしい」

以上3件,謝意を込めて,紹介させていただきます。今後とも,東日本大震災に関する「語り部」等の活動をできるだけ継続したい。そういう決意を新たにするきっかけになりました。

2023年3月 3日 (金)

河北新報報道(2023/3/2)「犠牲者身元特定に成果 不明者情報」

2月15日の小欄(内閣府(防災)の氏名公表に関する方針案)で触れた「行方不明者相談ダイヤル」に関し、昨日、河北新報が「宮城県警 震災直後から積極公開」という記事を掲載しました。11面の全面を使った大震災12年関連の特集記事です。

https://kahoku.news/articles/20230302khn000020.html (有料記事ですが,河北新報ID登録で1日1本の有料記事が読めるとのこと)以下下線小欄

多数の犠牲者と行方不明者が出た東日本大震災で、宮城県警は行方不明者の情報を積極的に公開し、捜索対象の絞り込みや犠牲者の身元確認につなげた。震災後、国内では災害のたびに安否不明者の情報の取り扱いが二転三転する。あの経験は生かされているのか。12年前の対応を振り返り、教訓を探った。

実は、210日に、この記事に関する取材を受けておりました。

同紙では、昨年から、「震災後に入社した記者たちが、読者や被災地の皆さんと一緒に考え、発信」する「震災報道若手記者プロジェクトチーム」を立ち上げ、テーマごとに掘り下げた記事を随時発信しているのですが、同PT所属の2名の若手記者と、旧知のS記者(202129日小欄「10年目の3.11が近づいてきた」で紹介)のお三方から、相当鋭い取材質問を浴びた次第です。

この記事のおかげで、自分の記憶・メモにも残っていなかった「事実」(例.315日の公表範囲が「氏名・住所・年齢」だったこと、17日に身元が分からない犠牲者の特徴・所持品を公表したこと)を再認識することができました。同紙には、ただただ感謝です。

一点だけ、論文・通達と違って、記事なので注記をつけにくいという事情もあって致し方ないと思うのですが、「安否不明者」「行方不明者」の意味内容がはっきり示されないまま、論旨が展開されているので、少し分かりにくい(場合によっては誤解を招きかねない)面があると感じてしまいました。

本来は、下記※の通知文書記載の通り、「安否不明者=行方不明者となる疑いのある者」、「行方不明者=当該災害が原因で所在不明となり、かつ、死亡の疑いのある者」という理解をすべきだろうと思いますが,そうなると「行方不明者」は「安否不明者」の部分集合になります。他方、この記事では、ところどころ、生存可能性がまだある段階(の方だけ)が「安否不明者」、その後、遺体未発見ながら既に犠牲者という段階(の方だけ)が「行方不明者」という前提で書かれている気も致します。

1122日の小欄(広義の行方不明者対策)で触れた内閣府等からの通知文書「災害時における安否不明者の氏名等の公表について」(令和3年9月16日付)https://www.bousai.go.jp/pdf/210916_ampifumeisha.pdf 

例えば、この記事の中で、「元宮城県警本部長は安否不明者の氏名公表が議論の中心となっていることに懸念を示す」というくだりについては、当時の宮城県警がやったのはまさに安否不明段階の方々の氏名公表なので、自己矛盾ではないかとの誤解を招くかもしれない、と少し感じた次第です。

私の真意は、「安否不明の段階での氏名公表だけが議論されていること」に対する懸念だったのですが、ものの表現はなかなか微妙で難しいものだと改めて感じました。

ちなみに、実は、その直後に「遺体の身元を確認し、遺族にお返しするためにも氏名の情報は欠かせない」と書いてあるので、上記の微妙な感覚は、しょせん杞憂(議論のための議論)にすぎないのかもしれません。

むしろ、そういう細かいことより、編集後記で、2人の若手記者が「『1の積み重ね』胸に響く信念」「実態に即した運用 問い続ける」と書いていただいたことに、強い感銘を受けた点をここに書くべきでしょう。

また、この記事を通じて、当時の担当職員の苦闘ぶりや、心情に触れることもできました。

本当によい記事を書いていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

2023年2月15日 (水)

内閣府(防災)の氏名公表に関する方針案

11月22日の小欄(広義の行方不明者対策)で、内閣府等からの通知文書「災害時における安否不明者の氏名等の公表について」(令和3年9月16日付)に触れましたが、最近、これを更に敷衍する政府方針案が示されました。「防災分野における個⼈情報の取扱いに関する指針」(案)が、それです。28日に公表され、3月1日までのパブリック・コメント募集手続中とのことです。「家族の同意なくても原則氏名公表へ」という形で、各紙も報道しました。

https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/kojinjoho/pdf/dai7kai/shiryo2.pdf 

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095230130&Mode=0 

この方針案の目的は、「地⽅公共団体等が災害対応や、平時の準備において個⼈情報等の取扱いに疑義が⽣じることが無いように個⼈情報の取扱いを明確化する」ことであり、いくつかの事例に即して考え方を示しています。

そのうちの事例9は、「災害発⽣時、捜索対象者となる安否不明者の特定に向け、安否情報の提供を呼びかけるために、安否不明者の名簿を公表してもよいか」という設定ですが、「安否不明者の氏名等の公表を行うことができると判断し得る」、「家族の同意の取得は不要」と明記した点は、相当に評価できると思います。

他方、この事例は、市町村が、住民基本台帳・避難所情報等の突合から始めて安否不明者名簿を作成する前提になっていますが、東日本大震災の際の実情等にかんがみれば、このような名簿作成方法が現実に機能するか、少し疑問に感じます(例えば、南三陸町では、発災2日目夕刻段階で、6ヶ所程度の避難所に7,500人がいて、1万人以上の安否確認がとれていませんでしたので、この事例に当てはめると、1万人以上の安否不明者名簿を公表することになります)。

むしろ、当時の宮城県警が実施したように、「行方不明者相談ダイヤル」(HP等を含む)による安否情報の収集・公表について、事例として触れるべきではないでしょうか。(携帯電話不通や「名寄せ」ができなかったことで、同ダイヤルに寄せられた「行方不明者」は7万2千名に及び、当時の宮城県警は、315日に「連絡のつかない方」リストをHP上に公表しました(その人数の記憶はありません)ので、名簿の規模感としては「五十歩百歩」かもしれませんが、携帯不通等の事情がなければ、事態は違っていた(=もう少し実態に合った数字になった)と思います。)

そのようなダイヤル等に関する事例方針案を作成していただけるのであれば、留意事項として、目的明示の必要性があるかどうかや、都道府県の枠を超える広域(海外を含む)の情報収集を前提としたダイヤル等の設置・運営の在り方(=誰が行うのが最も適当か)も、論ずる方がいいと考えます。

さらに、「安否不明者の捜索」目的だけではなく、その後の「遺体の身元確認」目的の関係機関への提供も視野に入れるべき(注:事例10で「救助活動のために名簿を自衛隊、警察、消防機関に提供してよいか」は設定済み)でしょう。今の方針案では、例えば、「救助活動の効率化・円滑化のための必要性が認められない例としては(略)発災後長時間が経過し救助の可能性がない場合がある」との記載がありますが、利用・提供が人命救助のフェーズ(通例、72時間程度)だけにしか認められないとの誤解を生む可能性もあります。

「行方不明者の捜索」は、東日本大震災から12年を迎えようとする今も、人命救助の可能性が全くないにもかかわらず断続的に実施されており、「要救助者の生命・身体に対する重大な危険の切迫性」等に基づく人命救助のフェーズだけの氏名公表を議論することは、少し踏み込み不足ではないか、との感を抱いてしまいます。(長期にわたって公表を継続せよ、という趣旨では全くありません。大災害直後の各種混乱を想定すれば、少なくとも、1週間程度は公表しても許されるのではないでしょうか。また、身元確認目的での関係機関への提供は、その後の相当期間、継続してほしいところです。)

総じて、災害現場における本「方針」の有用性を高めるため、正式作成後も、継続的に加筆・修正する姿勢を示していただきたいところです。

2022年12月27日 (火)

警察の対応の変化:「行方不明者対策」⇒「行方不明者の相談活動等」

11月22日に書いた通り、東日本大震災直後(201111月段階)の警察の対応から見ると、今の役割分担に関する仕切りは、微妙に変わってきていると思います。

警察庁では、本震災の反省・教訓や政府の各種方針を踏まえて警察庁及び都道府県警察における災害対策の見直しを幅広く検討するため、平成2311月、警察庁次長を長とする災害対策検討委員会を設置しました。

(参照:平成24年警察白書 https://www.npa.go.jp/hakusyo/h24/honbun/html/of210000.html

同委員会は、重点的に検討すべき事項を取りまとめ、その結果に基づき、警察庁は、「災害に係る危機管理体制の再点検及び再構築について(次長依命通達)」を同月30日付けで発出しました。このほか、警察庁は、同通達に基づく施策の推進状況について、平成26年度に「災害に係る危機管理体制の再構築に関する総合評価」を行っています。「総合評価」とは、いわゆる政策評価法(平成13年法律第86号)に基づく政策評価の一方式であり、「政策の決定から一定期間を経過した後に、特定のテーマについて政策効果の発現状況を様々な角度から掘り下げて総合的に評価を行い、問題点を把握するとともに、その原因を分析する方式」のことです(参議院調査室資料「立法と調査」2007.6 No.269)。

この時の総合評価書では、第2「都道府県警察等における施策」の中で、「4行方不明者対策」という項目建ての下、下記のような記述をしています(下線小欄)。

https://www.npa.go.jp/policies/evaluation/04jigo-hyouka/sougou_hyouka/10kikikanri/27_kikikanri_honbun.pdf 

(2)行方不明者情報の収集・整理

ア 政策の内容

(ア) 行方不明者情報の処理体制の確保

災害発生時における行方不明者情報の処理体制について検討する。

(イ) 行方不明者情報の精査、市町村との連携

行方不明者情報の処理に係る要領や市町村との連絡調整の要領について検討する。

イ 実施事項

(ア) 行方不明者情報の処理体制の確保

警察庁が発出した執務資料を参考として、被災地の行方不明者情報の円滑な集約・整理に向けた取組を行った。

(イ) 行方不明者情報の精査、市町村との連携

警察庁が発出した執務資料を参考として、行方不明者情報の精査のための行方不明者情報表の作成や市町村との連絡体制の構築を行った。

ウ 効果の把握の手法及びその結果

(ア) 行方不明者情報の処理体制の確保

24都府県警察において、警察庁が発出した執務資料を参考として、行方不明者相談ダイヤルの整備や行方不明者情報管理システムを構築したほか、警察庁から指定を受けた埼玉県警察、大阪府警察及び福岡県警察において、被災地の行方不明者情報を受け付けるウェブサイトを災害発生時に開設するための取組を推進した。

ところが、最新の「国家公安委員会・警察庁防災業務計画」(令和412月)を見ると、「第3編津波災害対策 第2章第2節第5行方不明者の相談活動等の実施」の部分に、次の記載があります。

https://www.npa.go.jp/laws/notification/keibi/keibi2/keibi3-20221208.pdf 

都道府県警察は、津波災害においては被災地が広範囲にわたることから、被災者の安否を気遣う肉 親等の相談に応じるため、行方不明者相談所、消息確認電話、相談窓口等の設置に努めるものとする。その際、災害対策基本法において行方不明者数については市町村が把握することとされていること(ただし、市町村においては、安否の確認がとれていないことのみでは、行方不明者数として計上しないことに留意する必要がある。)及び安否確認のため市町村において把握している避難者情報等を活用する必要があることから、行方不明者に係る相談について、市町村との情報共有を図るものとする。

もちろん、災対法その他による役割分担からすれば、書かれている内容は一応正しいわけですが、警察の行うべき「行方不明者対策」に関しては、もはや「行方不明者対策」の用語を用いておらず,一種のトーンダウンではないか、と感じてしまいます。特に、行方不明者相談ダイヤルの整備や、行方不明者情報管理システムの構築といった施策については、敢えて記載していないようにも見受けられる(そういったことは市町村にゆだねるべきとの考え方か)のですが、これはうがった見方でしょうか?元の職場を批判する意図は毛頭ありませんが、関係者には、201111月段階の警察の対応とその後の変化について、知っていただきたいと願うものです。