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2023年4月

2023年4月24日 (月)

みやぎの3.11「回顧編」

宮城県では、「東日本大震災復興検証事業」の最終年度たる昨年度において、震災の復旧等に携わった職員等へのインタビュー調査を行ったのですが、その一環として、当時の幹部職員12人を対象にしたインタビューを聞き書き形式でまとめた標記資料を先週公開しました。

https://www.pref.miyagi.jp/documents/45899/miyagi-311kaikohenall.pdf 

不肖小欄も、この資料のp179-p194に登場しております。

小欄があちこちで行っている「語り部」活動もそうなのですが、あの大震災の教訓を継承する上で、当時の関係者がこのように記憶等を呼び起こして、肉声や記録の形に残すことは非常に重要であり、その意味で、本事業も意義深いものだと思います。

実は、この件は、昨年6月に県庁から打診され、その結果、822日にインタビューを受けておりました。

小欄は、昨年来、次のように、広義の行方不明者対策に関連する記載を継続しておりましたが、こういった記載を始めるきっかけになったのが、実は本件インタビューへの対応準備でした。

  • 7月28日「関東大震災発災99年が近づいてきた」
  • 9月1日「防災の日」
  • 10月24日「宮崎県警」
  • 11月22日「広義の行方不明者対策」
  • 12月6日「広義の行方不明者対策(承前)」
  • 12月27日「警察の対応の変化:「行方不明者対策」⇒「行方不明者の相談活動等」」
  • 2月15日「内閣府(防災)の氏名公表に関する方針案」
  • 3月3日「河北新報報道(2023/3/2)「犠牲者身元特定に成果 不明者情報」」
  • 3月27日「大震災12年目の関連報道(中国新聞・河北新報・南日本新聞)」
  • 4月7日「内閣府・防災分野における個人情報の取扱いに関する指針(R5.3.24公表)

と申しますのも、宮城県庁の既存の大震災関連記録を拝見すると、遺憾ながら、「行方不明者対策」の語は全く登場しませんし、当時の宮城県警が手探りで(試行錯誤的に)行った各種取組に関する記載が不十分・不正確☆であり、この機会に、ぜひ補足・修正しておきたいと感じたからです。

☆ 一例 「発災後1年間の災害対応の記録とその検証」第4章第6節「埋火葬対応」p498-502 

https://www.pref.miyagi.jp/documents/3686/04dai4syou.pdf 

特にp499の「遺体安置所での業務は、当初は受付、案内、聞き取り調査等であったが、人員不足により県警察から市に対する事前の調整や相談がないまま、遺体確認の立会いや遺体写真の照合等へと業務が拡大した。遺族への対応や聞き取り調査等は想定されておらず、訓練等も全く行われていなかった。」

 その意味では、この「回顧編」の小欄関係分中、特に下記の部分に力点を置きました。そこで、ここに部分抜粋させていただきます。

行方不明者対策としての業務フロー

 具体的には、遺体安置所で検視をして身元確認をするわけですけれども、場所ごとに検視班を送り込む。例えば3月19日の段階で、既に4,800体余りの御遺体が収容されており、19か所の安置所があって、日々御遺体が入ってきます。御遺体の数がさらにどんどん増えていく。一歩間違うと屋外安置になりかねない。それはもう絶対に避けたいという思いがありました。

 捜索し、御遺体を収容し、検視・身元確認を行うといった一連の業務フローの出発点は、行方不明者数です。行方不明者は何人いるのか? それらが、我々として捜索して発見収容すべき御遺体の数になるわけですが、単に数だけではなく、お一人お一人の特徴等の情報については、ぜひ知っておきたいわけです、身元確認のために。

(略)そういうこともあって、警察としては、ある意味やりすぎるぐらい、やってしまった部分がありました。警察が主導した遺族対応について、応援で来られる県庁の職員にしても、かなり違和感があったと記録に書かれていますが、これは事実だろうと思います。こちらも手探りで始めた業務ですし、マニュアルがない、業務範囲も不確定といったことは、ある意味仕方のないことでした。

次に同じ状況だったらどうなるかということですが、おそらく今は、「警察はそこまでやる必要はなくて、安置所の設置も遺族対応も市町村がメインでやりなさい、そして県が調整しなさい」ということになっていると思います。

当時は我々としても、全く初めての出来事でしたし、市町村との間の事前の連携とか訓練も十分でなかった。反省点は多々ありますが、私は、広い意味の行方不明者対策として、いくつかの業務を関連付ける必要性を感じています。

警察はどこまでやるべきなのか

 ある沿岸部の町の職員証言集の中に、「警察の死体検案書作成が遅れて埋火葬ができなかった」というくだりがありました。それはさすがに勘弁してほしいと思いました。そこは、1通いくらで検案書を書くのかという手数料の問題なども含め、本来は市町村が担うべき部分なのです。検視が終わり、死因と身元の確認作業が終わった後、埋火葬の手続に入るための死亡判断(=死体検案)は、実は警察の管轄外(災害救助法上の「死体の処理」の一部)なのです。本当はそういうことも含めて、平素から市町村との連携を強め、実質一体になってやれればいいのですが、当時は結局、お医者さんを確保するのも事実上警察が主体になる。確かに日本法医学会や警察医の学会との交流もあり、普段から警察とセットで仕事をする警察医の先生方はぜひ協力しようということで来てくれるわけです。これらの検案医がいないと、そこで流れ作業のボトルネックになってしまって、まさに件の職員が問題だと思ったようなことが起こってしまいます。だから、次の大災害のために、どうやって死体検案体制を確保することができるか、棺の問題やブルーシートの問題、埋火葬も含めて、関連業務の全体を見渡すような新たな視点と仕組みづくりが必要ではないかと思います。

 例えば行方不明者については、今の県庁の記録ではほとんど出てきません。実際にどこの何部が主管なのかも分かりません。防災基本計画が改訂になり、市町村が主体である一方で、「県が一元的に集約する」となっています。

 警察はもちろん全面的に常に協力するはずですが、東日本大震災の発災当時は、こちらとしては無我夢中でやりすぎるぐらいにやっていく過程で、警察庁から「いくらなんでもそれは県警の仕事の外でしょう」と言われる事態になりました。大災害時にどこまで警察が担って、どこまで市町村が引き受けるのか、フロー図の形で業務イメージを事前に作り、県を含めて相互調整した上で、それに沿った図上訓練を行うことが大事だと痛感しています。

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追記1 出来上がった記録を改めて読むと、当時の警察本部長として記録に残す部分が、特定の課題だけのように見えてしまっている点について、大いに反省しております。この記録の紙数面の制約等がなければ、多数の殉職者を出してしまったことに関する悔恨や、全国警察の支援に対する謝意等を記すよう、インタビューの聞き手の方々に働きかけておくべきでした。今となっては、もはやリカバリー不能なので、別の形(例.2021313日 の小欄で紹介した「手記集「あの日、あの時、あの思い」等を活用した「語り部」活動)で補充してまいります。

追記2 他の幹部の方々の記録部分に言及することは本来差し控えるべきでしょうが、誤解を生みかねない下記記述(「伝聞ですが」と前置きされてはいます・・・)については、一言補足させていただく非礼をお許しください

p84警察庁長官が警視庁幹部を連れて、石巻の旧青果市場の遺体安置所を視察し、安置されている多くの御遺体を見て、「おまえら何をやっているんだ」と激怒された。それで警視庁がすぐ東京都に働き掛け、数百体を火葬するということになりました。

警察庁長官の来仙は4月4日でした。むしろ、p189-190「埋火葬への関与」で記載されている通り、警視庁を介した東京都へのお願いや、県警・県庁間の調整等は、その前の週の出来事でした。当時、手帳にその日の対応状況を結構克明にメモしておりましたので、この時系列的な事実関係には間違いありません。

 

2023年4月 7日 (金)

内閣府・防災分野における個人情報の取扱いに関する指針(R5.3.24公表)

2月15日の小欄で触れた「内閣府(防災)の氏名公表に関する方針案」ですが、324日、内閣府から「防災分野における個人情報の取扱いに関する指針」として公表されました。

元の案にあった15の事例のうち,事例8(「避難者の無事をFMラジオで周知」)がパブリックコメントを受けて削除され、事例番号が繰り上がったのですが,元の案の段階の事例9については、事例8としてそのまま正式の指針に盛り込まれています。

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=095230130&Mode=1 

実は、小欄も、意見提出いたしました。全部で19件の上記意見一覧中の6番です。具体的には、下記のように記載しましたが、500字の字数制限があって、言いたいことのすべてをきっちり書くことができませんでした。

政府方針案として、事例9で「安否不明者の氏名等の公表を行うことができると判断し得る」、「家族の同意の取得は不要」と明記した点は評価できる。他方、東日本大震災の際の実務等にかんがみ、(1)市町村による住民基本台帳・避難者情報等の突合からの業務の流れより、「行方不明者相談ダイヤル」等(HP等を含む)による安否情報の収集・公表について触れるべき(+留意事項として、目的の明示の必要性や、都道府県の枠を超える広域(海外を含む)の情報を前提としたダイヤル等設置・運営の在り方も、論ずるべき)、(2)「安否不明者の捜索」目的だけでなく、その後の「遺体身元確認」目的の関係機関への提供も視野に入れるべき(⇒必要性が認められない例としては、(略)発災後長時間が経過し救助の可能性がない場合がある」との記載は、利用・提供は72時間限定との誤解を生むのではないか)、(3)公表終了後の情報の転々流通を防止するための措置(p63の提供先における廃棄義務に類似するもの。例:公表時PDFファイルの複写禁止機能)についても論ずるべきではないか。総じて、現場における本指針の有用性を高めるため、作成後も加筆・修正する姿勢を示してほしい。

これに対する内閣府(防災)担当者の「回答」は、下記の通りでした。

(1)(2)について、本指針は、主に災害対応に知見を有する地方公共団体を対象としたアンケート調査やヒアリングにより、個人情報の取扱いの判断に迷う事例を選定しており、事例9は、「安否不明者の氏名等の公表」について法的整理をしております。なお、(1)について、市町村が被害情報や住民基本台帳の情報、避難所への問い合わせ等をもとに安否不明者リストを作成し公表するという事例設定は最近の実災害の事例に基づいており、住民基本台帳の情報の取扱いについては判断に迷う面があることから、取り上げているものです。安否不明者のリスト作成に活用し得る情報をそれらに限定する趣旨ではありません。

(3)安否不明者の氏名等を公表することにより安否情報を収集するには、前提として、本人や知人等が当該情報を認識できるよう、情報が広く流通する必要がありますので、原案のとおりとさせていただきます。

なお、指針については、今後、説明会等を通じて理解促進を図りつつ、地方公共団体からの意見を踏まえ、事例の充実等必要な見直しに努めてまいります。

「安否不明者のリスト作成に活用し得る情報をそれらに限定する趣旨ではありません」との記述は、いかにも官僚らしい書き方とロジック(元役人の小欄が言うべきことではありませんが・・)です。「事例設定は最近の実災害の事例に基づいて」いるとのことで、おそらくこの実事例は風水害ではないかと推測しますが、東日本大震災級の大災害ではうまく機能しないのではないかという趣旨の小欄意見(字数制限のためこの辺りを明確には書ききれなかった恨みがありますが・・)に対し、「論点のすり替え」ではないか、と感じました。

唯一の救いは、「今後、説明会等を通じて理解促進を図りつつ、地方公共団体からの意見を踏まえ、事例の充実等必要な見直しに努めてまいります」の記述で、ぜひぜひ、この14事例以外の論点設定を行っていただきたいところです。

 

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