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2023年2月

2023年2月15日 (水)

内閣府(防災)の氏名公表に関する方針案

11月22日の小欄(広義の行方不明者対策)で、内閣府等からの通知文書「災害時における安否不明者の氏名等の公表について」(令和3年9月16日付)に触れましたが、最近、これを更に敷衍する政府方針案が示されました。「防災分野における個⼈情報の取扱いに関する指針」(案)が、それです。28日に公表され、3月1日までのパブリック・コメント募集手続中とのことです。「家族の同意なくても原則氏名公表へ」という形で、各紙も報道しました。

https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/kojinjoho/pdf/dai7kai/shiryo2.pdf 

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095230130&Mode=0 

この方針案の目的は、「地⽅公共団体等が災害対応や、平時の準備において個⼈情報等の取扱いに疑義が⽣じることが無いように個⼈情報の取扱いを明確化する」ことであり、いくつかの事例に即して考え方を示しています。

そのうちの事例9は、「災害発⽣時、捜索対象者となる安否不明者の特定に向け、安否情報の提供を呼びかけるために、安否不明者の名簿を公表してもよいか」という設定ですが、「安否不明者の氏名等の公表を行うことができると判断し得る」、「家族の同意の取得は不要」と明記した点は、相当に評価できると思います。

他方、この事例は、市町村が、住民基本台帳・避難所情報等の突合から始めて安否不明者名簿を作成する前提になっていますが、東日本大震災の際の実情等にかんがみれば、このような名簿作成方法が現実に機能するか、少し疑問に感じます(例えば、南三陸町では、発災2日目夕刻段階で、6ヶ所程度の避難所に7,500人がいて、1万人以上の安否確認がとれていませんでしたので、この事例に当てはめると、1万人以上の安否不明者名簿を公表することになります)。

むしろ、当時の宮城県警が実施したように、「行方不明者相談ダイヤル」(HP等を含む)による安否情報の収集・公表について、事例として触れるべきではないでしょうか。(携帯電話不通や「名寄せ」ができなかったことで、同ダイヤルに寄せられた「行方不明者」は7万2千名に及び、当時の宮城県警は、315日に「連絡のつかない方」リストをHP上に公表しました(その人数の記憶はありません)ので、名簿の規模感としては「五十歩百歩」かもしれませんが、携帯不通等の事情がなければ、事態は違っていた(=もう少し実態に合った数字になった)と思います。)

そのようなダイヤル等に関する事例方針案を作成していただけるのであれば、留意事項として、目的明示の必要性があるかどうかや、都道府県の枠を超える広域(海外を含む)の情報収集を前提としたダイヤル等の設置・運営の在り方(=誰が行うのが最も適当か)も、論ずる方がいいと考えます。

さらに、「安否不明者の捜索」目的だけではなく、その後の「遺体の身元確認」目的の関係機関への提供も視野に入れるべき(注:事例10で「救助活動のために名簿を自衛隊、警察、消防機関に提供してよいか」は設定済み)でしょう。今の方針案では、例えば、「救助活動の効率化・円滑化のための必要性が認められない例としては(略)発災後長時間が経過し救助の可能性がない場合がある」との記載がありますが、利用・提供が人命救助のフェーズ(通例、72時間程度)だけにしか認められないとの誤解を生む可能性もあります。

「行方不明者の捜索」は、東日本大震災から12年を迎えようとする今も、人命救助の可能性が全くないにもかかわらず断続的に実施されており、「要救助者の生命・身体に対する重大な危険の切迫性」等に基づく人命救助のフェーズだけの氏名公表を議論することは、少し踏み込み不足ではないか、との感を抱いてしまいます。(長期にわたって公表を継続せよ、という趣旨では全くありません。大災害直後の各種混乱を想定すれば、少なくとも、1週間程度は公表しても許されるのではないでしょうか。また、身元確認目的での関係機関への提供は、その後の相当期間、継続してほしいところです。)

総じて、災害現場における本「方針」の有用性を高めるため、正式作成後も、継続的に加筆・修正する姿勢を示していただきたいところです。

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